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福岡地方裁判所 昭和54年(行ウ)2号 判決

原告 迫田義広

被告 中間市教育委員会 福岡県 福岡県教育委員会

主文

一  本件訴えのうち、被告福岡県教育委員会の原告に対する別紙目録記載1の処分、同中間市教育委員会の原告に対する同目録記載3ないし5の各処分及び同福岡県の原告に対する同目録記載7ないし10の各処分に関する部分を却下する。

二  被告中間市教育委員会の原告に対する別紙目録記載6の処分を取り消す。

三  原告の被告福岡県教育委員会に対するその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は、原告に生じた費用の一二分の一と被告中間市教育委員会に生じた費用の四分の一を同被告の負担とし、原告及び同被告に生じたその余の費用とその余の被告らに生じた費用を原告の負担とする。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  原告

1  被告福岡県教育委員会(以下、被告県教育委という。)の原告に対する本件転任処分及び本件懲戒処分をいずれも取り消す。

2(一)  主位的請求

被告中間市教育委員会(以下、被告市教育委という。)の原告に対する本件第一次ないし第四次研修命令をいずれも取り消す。

(二)  予備的請求

被告市教育委の原告に対する本件第一次ないし第三次研修命令がいずれも無効であることを確認する。

3  被告福岡県(以下、被告県という。)の原告に対する本件第一次ないし第四次減額措置をいずれも取り消す。

4  訴訟費用は被告らの負担とする。

二  被告県教育委

1  本案前の申立

原告の被告県教育委に対する訴えのうち、本件転任処分の取消しを求める部分を却下する。

2  本案の申立

原告の被告県教育委に対する各請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は原告の負担とする。

三  被告市教育委

1  本案前の申立

原告の被告市教育委に対する主位的及び予備的な各訴えをいずれも却下する。

2  本案の申立

原告の被告市教育委に対する主位的及び予備的な各請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は原告の負担とする。

四  被告県

1  本案前の申立

原告の被告県に対する各訴えをいずれも却下する。

2  本案の申立

原告の被告県に対する各請求をいずれも棄却する。

3  訴訟費用は原告の負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因(訴訟要件に関する主張を含む。)

1  対象適格

(一) 被告県教育委の原告に対する本件転任処分及び本件懲戒処分が存在する。

(二) 被告市教育委の原告に対する本件第一次ないし第四次研修命令が存在する。

なお、研修命令であつても、本件第一次ないし第四次研修命令のように、職員の勤務の態様、勤務場所の変更、将来の身分関係及び地位に影響を及ぼすものは、職員の具体的権利義務に影響を及ぼす職務命令として、行政処分の性格を有すると解すべきである。従つて、本件第一次ないし第四次研修命令は、抗告訴訟の対象となり得る。

(三) 被告県の原告に対する本件第一次ないし第四次減額措置が存在する。

2  原告適格及び訴えの利益

(一) 原告は、昭和五一年四月一日から同五三年三月三一日までの間、福岡県中間市立底井野小学校(以下、底井野小という。)校長で、同年四月一日から中間中校長である。

(二) 原告は、次のとおり、本件第一次ないし第三次研修命令の取消しによつて、減額された給与請求権を回復すべき法律上の利益を有する者であり、仮に、右取消しの利益がないとしても、その無効確認の利益はある。

原告は、本件第一次ないし第三次研修命令所定の期間中に、右各命令所定の勤務場所である教育センターに出勤しなかつたことを理由として、本件第一次ないし第四次減額措置及び本件懲戒処分を受けた。

3  審査請求とそれに対する裁決の経由(以下、訴願前置という。)

(一) 原告は、昭和五四年二月一九日、福岡県人事委員会(以下、県人事委という。)に対し、本件懲戒処分について審査請求(受理日は昭和五五年六月二五日である。)をなしたところ、県人事委は、右審査請求のあつた日(又は受理日)から三か月を経過しても裁決をしない。

(二) 原告は、県人事委に対し、本件第一次研修命令について昭和五三年一二月四日、本件第二次研修命令について翌五四年五月八日、それぞれ審査請求をなしたところ、県人事委は、昭和五五年六月二五日、いずれも不利益処分ではないとの理由で、これらを却下する旨の裁決をなした。

(三) 原告は、県人事委に対し、本件第一次減額措置について昭和五三年一二月四日、本件第三次及び第四次減額措置について翌五四年二月一九日、それぞれ審査請求をなしたところ、県人事委は、昭和五五年六月二五日、いずれも行政処分ではないとの理由で、これらを却下する旨の裁決をなした。

4  訴願前置を要しない正当な理由

(一) 原告は、次のとおり、本件転任処分について審査請求をしても自己に有利な裁決を期待できなかつたから、本件転任処分について訴願前置を要しない正当な理由がある。

原告は、昭和五三年四月に福岡県教育庁吏員に対し、同年九月に中間市会議員に対し、本件第一次研修命令発令後に被告県教育委委員長に対し、それぞれ本件転任処分について陳情したが、いずれも認められず、他方、被告市教育委員長は、昭和五三年九月の中間市議会において、本件転任処分を早急に是正するとの答弁をしながら、原告を現職に復帰させなかつた。そこで、原告は、被告県教育委の事情聴取により、本件転任処分を勤務条件に係る臨時措置であると認識していたため、昭和五三年一二月四日、県人事委に対し、校長現職に復されたい旨の措置要求に及んだが、県人事委は、昭和五五年六月二五日、本件転任処分は任命権者の任命行為であるとの理由で、これを却下した。

(二) 本件転任処分は、次のとおり、本件第一次ないし第四次研修命令と不可分一体のものであるところ、原告は、前記3(二)記載のとおり、既に本件第一次及び第二次研修命令について裁決を経ているから、本件転任処分について訴願前置を要しない正当な理由がある。

無記名の同和地区住民差別投書が、昭和五二年六月六日、部落解放同盟(以下、解同という。)中間地区協議会会長林添半次(以下、林添という。)に郵送されたことに端を発し、被告市教育委が中心となつて右投書犯人の探索がなされたが、その結果、右嫌疑が原告に向けられた。そこで、被告市教育委は、原告を忌避し、懲戒ないし分限免職に代わる手段として、原告に対し、長期研修命令を発することを企て、その準備工作として、被告県教育委に対し、本件転任処分を内申し、同教育委は、右内申どおり、本件転任処分をなした。

(三) 本件第一次ないし第四次研修命令は、次のとおり、密接に関連するものであるところ、原告は、前記3(二)記載のとおり、既に本件第一次及び第二次研修命令について裁決を経ているから、本件第三次及び第四次研修命令について訴願前置を要しない正当な理由がある。

被告市教育委は、前記1(二)記載のとおり、原告に対し、同一場所における同一主題の本件第一次ないし第四次研修命令を連続して発した。

(四) 本件第二次減額措置は、次のとおり、本件第一次減額措置と処分理由を同一にするところ、原告は、前記3(二)記載のとおり、既に本件第一次減額措置について裁決を経ているから、本件第二次減額措置について訴願前置を要しない正当な理由がある。

本件第一次及び第二次減額措置は、そのいずれもが、原告が昭和五三年一一月中に一二八時間欠勤したという同一の理由によつてなされた。

5  訴願前置を要しない緊急の必要性

(一) 本件第一次ないし第四次研修命令は、次のとおり、訴願前置を要しない緊急の必要性がある。

原告は、本件第一次ないし第四次研修命令により、その研修場所である教育センターに出勤しなければ、毎月給与支給日のたびに給与減額処分を受けるおそれがある。

(二) 本件第一次ないし第四次減額措置は、次のとおり、訴願前置を要しない緊急の必要性がある。

原告は、給与生活者であつて、もつぱら福岡県中間市公立学校校長として被告県から支給される給与により生計を維持しているから、本件第一次ないし第四次減額措置により、直ちに生計を維持しえなくなる。

6  本件転任処分取消しの訴えの出訴期間

行政事件訴訟法(以下、行訴法という。)第一四条第一項所定の出訴期間は、被処分者が処分の不利益性を疑いなきまでに認識した日から起算すべきであるところ、原告が本件転任処分の不利益性を疑いなきまでに認識したのは、次のとおり、本訴証拠調べの過程においてであるから、右出訴期間は遵守されている。

原告は、本件転任処分を、前記4(二)記載の経緯から、投書事件の真相究明のための一時待機を命ずる趣旨であると信じ、かつ、自己の被つた冤罪を晴らす機会もできるため、これを不利益処分に当たるものとは考えず、被告市教育委に対し、筆跡鑑定による調査を申出る等の方策を尽くしていたのであるが、本訴証拠調べの過程において、その不利益性を認識した。

7  取消事由

(一) 本件第一次ないし第四次研修命令は、次のとおり、原告の同意を要すると解すべきところ、これを欠くから違法である。

地方教育行政の組織及び運営に関する法律(以下、地教行法という。)第四五条、第四三条に基づく被告市教育委の研修命令は、規定の体裁からして、地公法第三九条に基づく被告県教育委の研修命令を補完する趣旨であると解すべきところ、後者については、福岡県教育公務員の長期にわたる研修に関する規則(以下、研修規則という。)第三ないし第五条によれば、研修期間を一か月以上六か月までの範囲で定め、研修題目・研修場所等を定めたうえ、公募あるいは本人の志望に基いてこれを命ずることとされているのであるから、前者についても本人の同意を要するというべきである。

(二) 本件転任処分及び本件第一次ないし第四次研修命令は、次のとおり、原告を教育現場から放遂する不当な目的をもつて発せられたものであり、その裁量権の範囲を逸脱しているから、違法である。

(1) 原告は、昭和二二年一月一五日、福岡県中間市(当時中間市)公立学校教員となり、昭和四一年三月三一日まで教諭として、同年四月一日から同四九年三月三一日まで教頭として、それぞれ中間市立公立学校に勤務し、同年四月一日から同五一年三月三一日まで同市立中間北中学校(以下、北中という。)校長として勤務し、同年四月一日底井野小校長となつたが、その間、中央研修及び海外研修等の長期研修を経験した。

(2) 解同中間地区協議会会長林添は、昭和五二年六月六日、無記名による、北中用務員井上正志(以下、正志という。)夫婦を非難し、かつ、同和地区住民を差別する趣旨の投書の郵送を受けたところから、同月八日及び同年九月一〇日、同市解放会館において被告市教育委及び同市関係部局責任者等臨席のうえ、右投書の文面検討会を開催し、被告市教育委に対し、右投書犯人の究明を要求した。

(3) 被告市教育委は、昭和五二年九月二〇日、事情聴取と称して原告を中間市役所に呼び出し、原告に対し、右投書事件の発生を告知し、筆跡鑑定の結果を示したうえで、原告を右投書犯人として断定し、原告を非難した。これに対し、原告は、右嫌疑を否定し、右証拠書類の写しの交付を要求したが、被告市教育委は、原告に対し、原告が右犯人でないことの立証をするようにとの要求をするだけで、右写しを交付しなかつた。

(4) その後、原告は、昭和五二年一一月七日までの間、被告市教育委に対し、一〇数回にわたり、その不当な処置を抗議したが、被告市教育委は、同日付五二中教学第五四九号文書をもつて、前記事情聴取の経過を確認したにすぎなかつた。

(5) 更に、被告市教育委は、原告が被告市教育委に対する抗議の姿勢を変えないため、昭和五三年三月八日、原告を忌避し、懲戒ないし分限免職に代わる手段として本件第一次研修命令を発することとし、その発令までの間、原告に教育実務を与えない趣旨で、被告県教育委に対し、本件転任処分を内申し、被告県教育委は、右内申に従い、昭和五三年四月一日、原告に対し、本件転任処分をなすとともに、安永治誠に対しても、中間中校長を命じ、同人をして校長の転職をなさしめ、その結果、原告は、事実上職務をなしえなくなつた。

(6) その後、被告市教育委は、昭和五三年四月七日、原告に対し、公式の事情聴取を行つたのみで、右投書事件の真相を解明しようとしないので、原告は、石田忠之に対し、右投書の筆跡鑑定を依頼し、その結果、昭和五三年九月一八日、同人から、右投書の筆跡と原告のそれとが相異する旨の筆跡鑑定書を得たため、同月二〇日、被告市教育委に対し、右鑑定書を提出した。

(7) ところが、被告市教育委は、右石田作成の鑑定書を一顧だにせず、かえつて、右投書犯人を軽々しく原告であると断定した失態が露見することを恐れ、原告を教育現場から放逐し、事をうやむやの裡に収拾することとし、昭和五三年九月二七日頃から、福岡県会議員を通じて、原告を教育センターに出向せしめるべく画策し始め、同年一〇月六日、原告に対し、本件第一次研修命令を告知した。

(8) その後、被告市教育委は、右不当な目的で、原告に対し、昭和五四年四月一日、昭和五五年四月一日及び昭和五六年四月一日、それぞれ本件第二次ないし第四次研修命令を発した。

(三) 原告は、本件第一次研修命令の知・不知、合法・違法にかかわりなく、実際に研修を受けていない以上、従前の勤務場所である中間中において勤務すべき筋合であるところ、本件第一次ないし第四次減額措置は、原告が、中間中に出勤しているのにもかかわらず、研修場所である教育センターに欠勤したとしてなされたものであるから、違法である。

(四) 本件第一次研修命令の効力が発生したのは、次のとおり、昭和五三年一一月四日であるから、それまでの原告の勤務場所は中間中であるところ、本件第一次ないし第四次減額措置及び本件懲戒処分は、原告が右一一月四日まで研修場所である教育センターに欠勤したことを前提としてなされたものであるから、違法である。

被告市教育委教育長小曾我清太郎(以下、小曾我という。)は、原告に対し、昭和五三年一〇月六日、口頭で、現職のまま同月五日以降教育センターにおいて長期にわたる研修を受けるべき旨を告知し、次いで、同月一九日到達の小曾我作成名義の同月一七日付五三中教学第一〇三六号文書をもつて、右研修主題を「学校経営」とする旨を通知し、更に、教育センター所長森英俊を介して、同年一一月四日到達の右森作成名義の同年一〇月三一日付五三教セ第六三四号文書をもつて、右研修の終期を翌五四年三月三一日とする旨を通知した。

(五) 本件懲戒処分は、右(一)及び(二)記載のとおり、違法な第一次研修命令に違反したことを理由とするものであるから、違法である。

8  無効事由

仮に、本件第一次ないし第三次研修命令の取消しが認められないとしても、本件第一次ないし第三次研修命令は、次のとおり、重大かつ明白なる瑕疵があるから、無効である。

(一) 本件第一次ないし第四次研修命令は、累次継続して同一場所における同一主題の研修を命じるものであり、かつ、原告は、一年後に退職勧奨年齢に達することに鑑みれば、被告らは、原告を将来教育現場に戻す意向のないことが容易に察知しうるのであるから、本件第一次ないし第四次研修命令は、単に研修を命じた職務命令であるというに止まらず、実質上転任処分の性質を有するというべきところ、任命権者でない被告市教育委が、右各命令を発したのであるから、本件第一次ないし第四次研修命令には、重大かつ明白なる瑕疵がある。

(二) 本件第一次ないし第四次研修命令は、前記7(二)記載のとおり、実質上懲戒処分の性質を有するというべきところ、懲戒権者でない被告市教育委が、処分説明書の交付もなく、右各命令を発したのであるから、本件第一次ないし第四次研修命令には、重大かつ明白なる瑕疵がある。

9  よつて、原告は、被告県教育委に対し、本件転任処分及び本件懲戒処分の違法であることに基づき、その各取消しを求め、被告市教育委に対し、主位的に本件第一次ないし第四次研修命令の違法であることに基づき、その各取消しを求め、仮に、本件第一次ないし第三次研修命令の各取消しを求める訴えが期間の経過により不適法であるとすれば、予備的に、本件第一次ないし第三次研修命令に重大かつ明白なる違法の存することに基づき、その各無効の確認を求め、被告県に対し、本件第一次ないし第四次減額措置の違法であることに基づき、その各取消しを求める。

二  請求原因に対する認否と主張(本案前の抗弁を含む。)

1  被告県教育委

(一) 請求原因1(一)、2(一)、3(一)の各事実は認める。

(二) 同4(一)の事実は否認する。

(三) 同4(二)の事実のうち、原告主張のとおりの投書事件の発生した点は認め、その余の点は否認する。

(本案前の抗弁1)

本件転任処分は、原告の主張するところを前提とすれば、地公法第四九条第一項に規定する処分に該当するから、同法第五一条の二、行訴法第八条第一、二項により、正当な理由又は緊急の必要性等のないかぎり、訴願前置をしなければ、その取消の訴えを提起することができないものであるのに、原告は、訴願前置をしないままで本件訴訟を提起しているところ、請求原因4(一)・(二)の各事実は、本件転任処分について訴願前置を要しない正当な理由に該当しない。

(四) 同6の事実のうち、原告主張のとおりの投書事件の発生した点は認め、その余の点は否認する。

(五) 同7(二)の各事実について

(1) 同(1)の事実は認める。

(2) 同(2)の事実のうち、原告主張のとおりの投書事件が発生した点は認め、その余の点は否認する。

(3) 同(3)、(4)の各事実は否認する。

(4) 同(5)の事実のうち、被告市教育委の内申に基づき、原告に対して本件転任処分がなされ、安永治誠が中間中校長として、その職務を行うようになつた点は認め、その余の点は否認する。

(5) 同(6)の事実のうち、原告主張のとおり鑑定書の提出された点は認め、その余の点は否認する。

(6) 同(7)の事実のうち、原告主張のとおり本件第一次研修命令が告知された点は認め、その余の点は否認する。

(7) 同(8)の事実のうち、原告主張のとおり研修命令が発せられた点は認め、その余の点は否認する。

なお、本件転任処分及び本件第一次ないし第四次研修命令の発せられた経緯は、次のとおりである。

原告が北中校長となつた当時、同校の校舎は多少の補修を必要とする程度で、同体育館は昭和四五年に建築されたばかりであつたところ、原告は、付近住民に対し、右体育館の使用を許可しながら、その管理を怠つたため、これを荒廃せしめ、また、被告市教育委から、教材費予算の範囲内である四〇万円程度の竪型ピアノを購入するように指示を受けながら、七五万円のグランドピアノを六〇万円に値引きさせて、これを購入し、かつ、その予算超過分についての会計も不明朗であり、更に、右赴任直後、財務規則を無視して不要な教職員用のスチール製の机、椅子等を購入し、右代金を、本来生徒に還元すべき学校のパン会計から捻出した。他方、その後発生した右投書事件について、被告市教育委は、原告をかばうように行動し、その努力により、右投書問題は、昭和五二年一〇月二八日、被告市教育委が解同に対し、同和教育についての見直しを約することによつて解決をみたのであり、被告市教育委が、原告を右投書犯人であると断定し、これを放逐又は懲戒しようとしたことは全くなかつた。その頃、原告は、底井野小の校長であつたが、同校教頭が病気のため長期欠勤した際、地教行法第三七条、学校教育法第二八条により、小学校教頭の任免権者が被告県教育委であるのにもかかわらず、教務主任に対し、教頭職代行を委嘱し、これに対する被告市教育委の注意に従わず、更に、中間市教職組等の争議に際し、被告市教育委の指示を待つて用務員に対する職務命令を発出すべきところ、ストライキが中止となり、右指示がないのにもかかわらず、独断で、用務員室に命令書を投入する方法をもつて、右命令を発出した。そこで、被告市教育委は、かねてから、原告が学校施設の管理、学校財務の処理、学校運営の能力に欠けるところがあるため、学校経営を研修主題とする研修の必要があると考え、昭和五二年四月から翌五三年三月まで学校経営を主題として教育センターにおいて研修していた要幸夫校長に引き続き、原告を同主題で同センターにおいて研修させることとし、同センターとの間で協議していたが、同センターの都合により右発令が遅れ、原告の鑑定書提出の前である昭和五三年九月一九日、中間市議会において、教育長小曾我が右経緯を説明し、漸く、同年一〇月に至り、同センターの受入態勢が整つたため、原告に対し、本件第一次研修命令を発した。ところが、原告は、昭和五三年一二月四日まで右研修に従事せず、研修の期間が短く、実績もあがつていなかつたため、本件第二次研修命令が発せられ、更に、原告の研修態度、内容及び成果が不十分であつたため、本件第三次及び第四次研修命令が発せられた。

(六) 同7(四)の主張は争う。

(七) 同7(五)の主張は争う。

2  被告市教育委

(一) 請求原因1(二)のうち、被告市教育委の原告に対する本件第一次ないし第四次研修命令が存在することは認めるが、その余の主張は争う。

(本案前の抗弁2)

本件第一次ないし第四次研修命令は、次のとおり、法的効果を生じない行為であるから、抗告訴訟の対象となる「行政庁の公権力の行使に当たる行為」に該当せず、右取消しの訴えはいずれも不適法である。

本件第一次ないし第四次研修命令は、被告市教育委が、地教行法第四五条に基づいて発したもので、その性質は、同法第四三条に基づく包括的な服務監督権による職務命令であり、その目的は、教育公務員の人格及び識見を高め、勤務能率の発揮及び増進等のためになされるものでその種類及び期間の如何を問わず、それ自体としては本人の権利義務に対して直接不利益を与えるものではない。

(二) 同2(一)の事実は認める。

(三) 同2(二)の事実のうち、本件第一次ないし第四次減額措置の存在する点は否認し、その余の点は認める。

(本案前の抗弁3)

本件第一次ないし第三次研修命令は、既に、その研修期間が満了し、かつ、回復すべき法律上の利益はないから、その取消しを求める訴えは、不適法である。

(本案前の抗弁4)

本件第一次ないし第三次研修命令の無効確認の訴えは、次のとおり、行訴法第三六条所定の要件を欠き、不適法である。

原告は、本件第一次研修命令に従わないことを理由として受けた本件第一次ないし第四次減額措置及び本件懲戒処分について、いずれも取消しの訴えを提起しているところ、右訴えは、いずれも本件第一次研修命令の効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えであり、原告は、右訴えによりその目的を達し得る。

(四) 同3(二)の事実は認める。

(五) 同4(三)の事実は認める。

(本案前の抗弁5)

原告は、本件第三次及び第四次研修命令につき、本案前の抗弁1と同一の理由により、訴願前置を必要とするのに、これを経由しないで本件訴訟を提起しているところ、請求原因4(三)の事実は、本件第三次及び第四次研修命令について訴願前置を要しない正当な理由に該当しない。

(六) 同5(一)の事実は否認する。

(本案前の抗弁6)

原告は、本件第一次ないし第四次研修命令につき、本案前の抗弁1と同一の理由により、訴願前置を必要とするのに、これを経由しないで本件訴訟を提起しているところ、請求原因5(一)の事実は、たとえそれを前提としてもなお、本件第一次ないし第四次研修命令について訴願前置を要しない緊急の必要性に該当しない。

(七) 同7(一)の主張は争う。

本件第一次ないし第四次研修命令は、地教行法第四五条、第四三条に基づくものであるから、原告の同意は要件ではない。

(八) 同7(二)の各事実については、前記被告県教育委の認否(六)と同じ。

(九) 同8の各主張は争う。

行政処分の無効事由は、極めて明瞭な無権限、明文の重要な手続規定違反、書面上の重要記載事項の欠如、処分対象者の明らかな誤認等の場合に限られると解すべきところ、本件第一次ないし第三次研修命令は、いずれも原告の服務監督権者である被告市教育委が、法令上の根拠と裁量権に基づき、適法手続によつて発令したものであるから、重大かつ明白なる瑕疵はない。

3  被告県

(一) 請求原因1(三)の事実は否認する。

(本案前の抗弁7)

本件第一次ないし第四次減額措置には、次のとおり、抗告訴訟の対象となる「行政庁の公権力の行使に当たる行為」が存在せず、右取消しの訴えは、いずれも不適法である。

福岡県公立学校職員の給与に関する条例(以下、給与条例という。)第五条、第九条、第一四条、第一八条、第二一条及び福岡県職員の給与に関する条例等の施行に関する規則(以下、給与規則という。)第二六条第二項第三号によれば、勤務しなかつた時間ないし期間については、当初から給与請求権が発生しないのであり、減額させる行為というものの介在する余地がないことが明白であるところ、本件第一次ないし第四次減額措置なるものは、原告が本件第一次研修命令所定の研修場所において勤務しなかつた時間ないし期間があるため、これを給与計算の基礎数値として考慮のうえ給与を算出したというものにすぎず、減額という特段の行為が介入したものではない。

(二) 同2(一)、3(三)の各事実は認める。

(三) 同4(四)の事実は認める。

(本案前の抗弁8)

原告は、本件第二次減額措置につき、本案前の抗弁1と同一の理由により、訴願前置を必要とするのに、これを経由しないで本件訴訟を提起しているところ、請求原因4(四)の事実は、本件第二次減額措置について訴願前置を要しない正当な理由に該当しない。

(四) 同5(二)の事実のうち、原告が給与生活者である点は認め、その余の点は否認する。

(本案前の抗弁9)

原告は、本件第一次ないし第四次減額措置につき、抗弁1と同一の理由により、訴願前置を必要とするのに、これを経由しないで本件訴訟を提起しているが、原告には、次の事情により、本件第一次ないし第四次減額措置について訴願前置を要しない緊急の必要性が生じない。

原告の給与月額は、三三万九三九六円であり、既に、原告は、昭和五三年一二月五日から、教育センターにおいて勤務しているので今後の給料等の減収はあり得ないし、しかも、原告の妻は、福岡県直方市立直方第二中学校に勤務して給与月額三〇万五三九六円の収入がある。

(五) 同7(三)の主張は争う。

(六) 同7(四)の主張は争う。

なお、被告市教育委は、昭和五三年一〇月四日、原告に対し、研修期間を同月五日から翌五四年三月三一日まで、研修場所を教育センター、研修主題を学校経営とする本件第一次研修命令を告知しており、本件第一次研修命令は、右告知によつてその効力を生じ、これによる研修期間は右一〇月五日に開始されたから、原告の勤務すべき場所は、同日以降教育センターである。

第三証拠〈省略〉

理由

第一本案前の主張に対する判断

一  本件転任処分及び本件懲戒処分取消しの訴えについて

1  請求原因1(一)、2(一)の各事実は、当事者間に争いがない。

2  請求原因3(一)の事実は、当事者間に争いがない。

右事実によれば、本件懲戒処分については、地公法第四九条の二所定の不服申立て(審査請求)をしたが、行訴法第八条第二項第一号に定める三箇月の期間を経過しても裁決されなかつたことが明らかである。

3  進んで、本案前の抗弁1について判断する。

(一) 本件転任処分は、地公法第四九条第一項に規定する不利益処分に該当するものと解されるところ、かような不利益処分に対しては、地公法第五一条の二、行訴法第八条第一、二項により、地公法第四九条の二所定の不服申立てをなすべきであるのに(訴願前置)、原告がこれを経由していないことは、弁論の全趣旨に徴して明らかである。

もつとも、この点に関し、原告は、同法第四六条に定める措置要求をして却下された旨主張しているけれども、元来、右第四六条に定める措置要求と同法第四九条の二所定の不服申立てとは、全くその趣旨、目的を異にする制度であるから、前者をもつて後者に代え得るものでないことは、いうをまたないところである。

(二) そこで、請求原因4(一)について判断する。原告は、本件転任処分について審査請求をしても、自己に有利な裁決を期待できなかつた旨主張しているけれども、そもそも、行政庁及び議会が、原告に対する不利益処分に関して何らかの反応を示したからといつて、原告に対し誤つた教示をする等その責に帰すべき事由により、原告の不服申立てを困難ならしめた等の特段の事情が存する場合は格別、そうでない限りは、不利益処分に対する不服申立てを省略できるものではないと解するのを相当とするところ、後記認定の事実関係を参酌しても、右特段の事情を認めることができないから、この点に関する原告の主張は採用できない。

(三) 次に、請求原因4(二)について判断するに、本件転任処分が、任命権者である被告県教育委による処分であり、本件第一次ないし第四次研修命令が、服務監督権者である被告市教育委による処分であることは、原告の主張自体から明らかであり、両者は、行政処分としての性質、目的、効果を異にするから、たとえ、両者が単一の不当な目的でなされた同一の被処分者に対する不利益処分であるとしても、これらを不可分一体ないし包括的な一個の行政処分として評価することは許されず、従つて、右両者は、別個の行政処分として、それぞれ別個に地公法第四九条の二所定の審査請求の対象となるものと解すべきであるから、この点に関する原告の主張は採用できない。

3  これに加えて、本件転任処分について訴願前置を要しないとすれば、その取消しの訴えの出訴期間は、行訴法第一四条第一項、第三項の制限に服さなければならないことになるが、本件における右訴えが、本件転任処分の日から一年を経過した後に提起されたことは、本件訴訟の経過に照して明白であり、しかも、行政処分の法的安定性の要請に鑑みれば、右出訴期間の制限は、被処分者の処分に対する知・不知又は不利益処分性の認識の有無によつて左右されるものではないと解するのが相当であるから、右出訴期間の不遵守につき正当な理由の存することの主張立証がない本件転任処分取消しの訴えは、この観点からしても不適法というべきである。

4  以上の次第であるから、本件懲戒処分取消しの訴えは、その訴訟要件の具備において欠けるところがなく、適法ということができるが、本件転任処分は、その余の点について判断するまでもなく、不適法として排斥を免れない。

二  本件第一次ないし第四次研修命令取消しの訴え及び本件第一次ないし第三次研修命令無効確認の訴えについて

1  請求原因1(二)のうち、被告市教育委の原告に対する本件第一次ないし第四次研修命令が存在することは、当事者間に争いがない。

2  そこで、本案前の抗弁2について判断するに、一般的には、受命者の地位あるいは給与等の身分関係に変更を生じさせない研修命令といえども、これが、特別権力関係設定の目的を越えて発せられる場合には違法性を帯び、公務員個人の私法上の権利あるいは基本的人権を侵害することもありうるのであり、特に、勤務場所又は勤務内容を変更する長期の研修命令が連続して発せられるならば、実質上転任又は配置換処分に等しい結果を招来することになるというべきであるから、本件第一次ないし第四次研修命令は法的効果を生じうるものであつて、抗告訴訟の対象適格を有するというべきであるから、この点に関する被告市教育委の主張は採用できない。

3  請求原因2(一)の事実は、当事者間に争いがない。

4  本案前の抗弁3、請求原因2(二)について判断するに、本件第一次ないし第三次研修命令が、既に、その研修期間を満了していることは、前記争いのない、本件第一次ないし第三次研修命令の命令内容自体から明らかである。

そこで、原告が、本件第一次ないし第三次研修命令の取消しによつて、その主張するように給与請求権を回復するか否かについて検討するに、行政組織が、行政事務の統一的かつ能率的処理及び行政責任の必要のため、ピラミツド型階層的構造をなしていることに鑑みれば、職務命令が、職務上の指揮監督権を有する上司により、当該部下の職務に関するものについてなされた場合、その内容に重大かつ明白な違法の存しない限り、違法な職務命令といえども、それに対する服従義務(地公法第三二条、地教行法第四三条第二項)が発生し、これに違反して所定の勤務場所に出勤しなければ、給与請求権は発生せず、かつ、懲戒事由(地公法第二九条第一項第二号)に該当することがある反面、これに服従して所定の勤務場所に出勤すれば、給与請求権が発生し、かつ、懲戒事由にも該当しないと解するのが相当であり、また、違法な職務命令に対する服従義務が、右にみたとおり、行政組織の構造に必然的に内在するものである以上、右の理は、違法な職務命令が、後日、取り消されるに至つたとしても、何ら径庭はなく、従前の法律関係を覆すに至るものではないと解するのが相当である。

他方、違法な職務命令の瑕疵が、右に述べた以上に大きい場合には、その命令は無効であるから、勤務場所が右命令によつて変更しないことになり、従前の勤務場所に出勤すれば、給与請求権が発生し、かつ、懲戒事由には該当しない反面、右命令所定の勤務場所に出勤しても、給与請求権は発生せず、かつ、懲戒事由が生じることもありうるということになる。

してみれば、本件第一次ないし第三次研修命令が取り消されたとしても、そのことから直ちに、出勤を怠つたか否かの判断が左右されるものではないから、そのために給与請求権が遡つて発生することはありえず、他方、本件懲戒処分が取り消されない限り、これによつて減額された給与請求権が回復されることはない筋合いであるから、この点に関する原告の主張は採用できない。

5  進んで、本案前の抗弁4について判断するに、行訴法第三六条の規定は、無効等確認の訴えは、「(1)、当該処分又は裁決に続く処分により損害を受けるおそれのある者」又は「(2)その他当該処分又は裁決の無効等の確認を求めるにつき法律上の利益を有する者で、当該処分もしくは裁決の存否又はその効力の有無を前提とする現在の法律関係に関する訴えによつて目的を達することができないもの」について許されると解するのを相当とするところ、原告は、請求原因2(二)として、本件第一次研修命令の後続処分たる本件第一次ないし第四次減額措置及び本件懲戒処分が既になされていることを主張しているのであるが、右主張が、行訴法第三六条所定の要件に該当しないことは明白であるから、結局、原告のこの点に関する主張も又、採用することができない。

6  以上の次第であるから、本件第一次ないし第三次研修命令取消しの訴え及び同命令無効確認の訴えは、いずれも訴えの利益(又は原告適格)を欠き、不適法であるというべきである。

7  更に、本件第四次研修命令取消しの訴えの関係で本案前の抗弁5、6について判断するに、本件第四次研修命令は、地教行法第四三条第一項、第四五条に基づいて、任命権者ではない被告市教育委が、その服務監督権に基づいて発したものであることは、前記のとおりであり、従つて、本件第四次研修命令は、地公法第四九条第一項所定の任命権者による不利益処分には該当せず、延いては、地公法第五一条の二所定の訴願前置を経ずに、直接取消しの訴えを提起できると解すべきであり、請求原因4(三)、5(一)について判断するまでもなく、被告の主張は採用できない。

してみれば、本件第四次研修命令取消しの訴えは適法であるというべきである。

三  本件第一次ないし第四次減額措置取消しの訴えについて

1  本案前の抗弁7、請求原因1(三)について判断するに、成立に争いのない乙第七号証の一ないし四、証人佐藤孝雄の証言によれば、本件第一次、第三次及び第四次減額措置と称するものは、原告が、任命権者である被告県教育委又は被告市教育委の承認なしに、本件第一次研修命令所定の研修場所である教育センターに勤務しなかつたことが認定されたため、その欠勤時間に応じた給与請求権が、給与条例第一四条に基づき、当初から発生していなかつたことを根拠として、発生している給与額のみを計算のうえ支給したというにすぎず、減額させる行為というものは介在していないこと、本件第二次減額措置と称するものも、右同様、給与条例第二一条、給与規則第二五条、第二六条に基づき、その欠勤時間に応じて期間率が当然低下し、その低下による差額分の勤勉手当請求権が当初から発生していなかつたことを根拠として、発生している勤勉手当額のみを計算のうえ支給したというにすぎず、減額させる行為というものは介在していないことが認められ、従つて、請求原因1(三)の事実は、これを認めることができない。

2  してみれば、本件第一次ないし第四次減額措置の取消しの訴えは、その余の点について判断するまでもなく、対象適格を欠き、不適法であるというべきである。

第二本案に対する判断

一  本件第四次研修命令の取消しの訴えについて

1  請求原因7(一)について判断するに、教育公務員は、その職務と責任の特殊性(教育基本法第一条、第六条第二項)から、その職務の遂行のため、絶えず研究と修養に努めなければならない(教育公務員特例法第一九条第一項)ことは自明の理であり、そのために教育公務員には、研修を受ける機会が保障されている(同法第二〇条)反面、その研修の重要性に鑑み、任命権者又は服務監督権者が職務命令として研修を命じうることとされている(地教行法第四五条、第四三条、地公法第三九条、教育公務員特例法第二〇条)。なるほど、研修効果を高めるために、本人の同意が得られることは、研修制度の運用上望ましいことではあるが、右にみたとおり、教育公務員の研修の重要性に鑑み、職務命令としての研修も必要不可決であると解されるからには、同命令に本人の同意は必要でないとせざるを得ない。してみれば、長期研修規則は、右に述べた運用上望ましい理想形態を示しているものにすぎず、同規則以外の研修形態を禁止しているとまでは到底解せられない。

従つて、原告の右の点に関する主張は採用することができない。

2  請求原因7(二)について判断する。

(一) 原告は、昭和二二年一月一五日、福岡県中間市(当時中間町)公立学校教員となり、昭和四一年三月三一日まで教諭として、同年四月一日から同四九年三月三一日まで教頭として、それぞれ中間市内の各公立学校に勤務し、同年四月一日から同五一年三月三一日まで北中校長として勤務し、同年四月一日底井野小校長となつたが、その間、中央研修及び海外研修等の長期研修を経験したこと、解同中間地区協議会会長林添は、昭和五二年六月六日、無記名による、北中用務員正志夫婦を非難し、かつ、同和地区住民を差別する趣旨の投書の郵送を受けたこと、被告市教育委は、被告県教育委に対し、本件転任処分を内申し、被告県教育委は、昭和五三年四月一日、原告に対し、本件転任処分をなすとともに、安永治誠に対しても、中間中校長を命じ、同人をして校長の職務をなさしめたこと、原告は、昭和五三年九月二〇日、被告市教育委に対し、石田忠之作成の、投書の筆跡と原告のそれとが相異する旨の筆跡鑑定書を提出したこと、その後、被告市教育委は、原告に対して本件第一次研修命令を告知したこと、昭和五四年四月一日、昭和五五年四月一日及び昭和五六年四月一日、それぞれ本件第二次ないし第四次研修命令が発せられたことは、いずれも当事者間に争いがない。

(二) 前記当事者間に争いのない事実に成立に争いのない甲第三ないし第五、第八、第九号証、第一二号証の一、二、第一九ないし第二二号証、第二三号証の一ないし三、乙第六号証、第八号証の一、同号証の二の一ないし三、第九号証の一、同号証の二の一ないし四、第一〇ないし第一三号証、第一四号証の一ないし四、第一六号証、第一七号証の一、二、第一八号証の一、二、第二〇号証、証人井上孔孝の証言により真正に成立したものと認められる甲第七号証の一、二、原告本人尋問の結果により真正に成立したものと認められる甲第一〇号証、右証人、証人柴田幸好、同小曽我清太郎(第一、二回)、同佐藤孝雄、同渕上雄幸の各証言、原告本人尋問の結果を総合すれば、次の各事実が認められる。

(1) 原告は、昭和四九年四月一日、北中校長に任用されたが、その直後、学校施設の充実に意欲的な余り、本来生徒に還元すべきパン会計の収益をもつて教職員用のスチール製机、椅子等を購入することもあつたものの、生徒数の激減及び白蟻の侵食により荒廃していた校舎及び体育館の補修願いを出したり、音楽教師の要望を尊重してグランドピアノの購入を打診する等積極的な学校経営に取り組み始めた。ところが、グランドピアノの値段が、備品購入予算を超過していたため、中間市は、原告に対し、予算内で竪型ピアノを購入するように指導したところ、原告は、音楽教育の充実を重視し、業者をしてグランドピアノを値引きさせたうえ、中間市に対し、予算内の四八万九五〇〇円を請求させて、これを購入し、右差額を他の予算項目等の操作により消化してしまつた。

(2) その頃から、昭和四五年に建築されたばかりの北中体育館の窓ガラスが、何者かの投石によつて破壊される事件が頻発するようになり、原告は、右修復に追い着かず、遂には、窓ガラスのない状態で放置するに至つたところ、これを見兼ねた市民の苦情を受けた中間市長及び被告市教育委教育長柴田幸好は、昭和五〇年一〇月頃、北中体育館を視察し、その際、市長は原告を厳しく戒めた。そこで、原告は、教職員の協力を求め、学校の夜間巡回を実行し、その成果がみられたので、約一か月半でこれを中止したところ、再度、同様の事態が発生し、これに対する中間市議会議員の事情聴取に際し、原告が右責任を学校周辺の環境に転嫁する発言をしたことから、昭和五一年三月一一日、中間市議会において、被告市教育委に対し、右責任の所在が問われるとともに、原告の校長としての無気力化が指摘された。そこで、被告市教育委は、原告の気分転換を計る趣旨で、被告県教育委に対し、原告の転任を内申した結果、原告は、同年四月一日、底井野小校長となつた。

(3) 他方、解同中間地区協議会会長林添は、昭和五二年六月六日、無記名による、北中用務員正志夫婦を非難し、かつ、同和地区住民を差別する趣旨の投書の郵送を受けたため、翌七日、解放会館において、解同及び関係者出席のうえ、右投書の文面検討会を開催し、その結果、右投書を有識者による差別投書であると断定し、その真相を解明することとした。そこで、昭和五二年六月八日及び九日、解放会館において、正志に対する事情聴取が実施されたが、その際、正志が、右投書者の心当りとして原告以外にはないと発言したこと、右文面自体からみて、右投書者は教育関係者であるとの意見も出たことから、被告市教育委の責任において真相を糾明することになつた。

(4) 被告市教育委は、右投書事件が、学校教育に波及することを回避すべく、その調査を開始し、昭和五二年六月一〇日から同年一〇月中旬にわたつて、正志と約一〇回余面会し、同人と原告との敵対関係を確認するとともに、同年六月一七日、裁判所での鑑定経験のある福岡女子高等学校書道教師坂口秀敏に対し、右投書の写しと原告作成の文書とを交付し、その筆跡鑑定を依頼したところ、同年七月七日、右投書は原告の筆跡である旨の鑑定結果の報告を受けた。しかるに、同年六月一二日、再度、同様の投書事件が発生したため、正志に対する投書事件も再燃し、解同は、被告市教育委に対し、強く真相の解明を迫つたため、被告市教育委としては、右一連の投書事件について何らかの解決方法を講ぜざるを得なくなつた。

(5) 被告市教育委は、昭和五二年九月二〇日、中間市役所において、原告に対し、右筆跡鑑定の結果を示し、右投書事件を告知したところ、原告は、右嫌疑を否定し、右鑑定人と対決するから右鑑定書の写しを交付されたい旨要求したため、被告市教育委は、原告が理不尽な行動に走ることを慮つて、これを拒否し、更に、学校の管理運営について支障のない限り、校長としての良識と良心に基づき、原告の自由な判断及び方法をもつて、被告市教育委を説得しうる程度の反証を提出するように申し渡した。そこで、原告は、右投書の写しを持ち帰り、翌二一日、被告市教育委の学務課長井上孔孝に架電して、右鑑定人の氏名及び住所を尋ねたが、これを拒否され、更に、その頃、被告市教育委関係者に対し、繰り返し苦情を申立てたが、いずれも受け付けられなかつた。

(6) その頃、解同は、中間市長を介し、被告市教育委に対し、右一連の投書事件について、各学校校長及び教頭臨席のうえでの糾弾学習会の開催を要請したため、昭和五二年一〇月二一日から同月二四日にわたり、右学習会が開催され、原告の欠席のままで、右投書事件の犯人として個人名を開示するのは時期尚早であること、教育関係者であると思われる人に差別意識があること自体が解放教育にとつて致命的問題があること、今後、より一層同和問題に対する理解を深めることを確認のうえ、これを終結した。そこで、被告市教育委は、昭和五二年一〇月二八日、右顛末を総括し、同年一二月五日に原告の弁明を聴取することに決し、その旨を原告に連絡したが、原告は、これを拒否し、被告市教育委関係者に対し、冤罪である旨の抗議文を送り続けた。

(7) 他方、昭和五二年一〇月二一日から同年一二月一九日の間、底井野小教頭安田健次郎が病気のため欠勤していたが、その間、原告は、同年一〇月二一日及び同年一一月二一日の二度にわたつて、教頭職の代行を教務主任に委嘱する旨の報告をなしたところ、被告市教育委から、教頭職の代行は違法である旨の示唆を受け、更に、その頃、原告は、中間市教職員組合等の争議に際し、被告市教育委の指示を待つて用務員に対する職務命令を発出すべきところ、ストライキが中止となり、右指示がないのにもかかわらず、独断で、用務員室に右命令書を投入する方法をもつて、これを発出したため、被告市教育委は、組合員から抗議を受ける羽目となつた。

(8) 被告市教育委は、昭和五三年三月八日、委員会を開催したが、その際、委員長が、右投書事件の経過を説明し、人事異動の時期でもあるから、原告の弁明を聴取のうえ、右問題に対する決着を計ることを提案したため、原告を委員会の席上に呼び出したところ、原告は、被告市教育委に対し、任命権者でないものと話す気はない旨毒突き、早々に退席してしまつた。そこで、被告市教育委は、原告の不遜な言動に激怒し、直ちに、秘密会を開催し、事務局から、原告の従前の行状を聴取し、前記学校財務の処理、学校施設の管理及び学校運営の状況をも総合勘案した結果、分限及び懲戒に処する旨や、原告の義兄が市会議員を勤めている直方市の校長として引き取らせる旨の意見も出たが、最終的には、原告に対する処遇の具体案を教育長小曽我に一任することに決定した。

(9) そこで、教育長小曽我は、被告県教育委指導第二課とも折衝した結果、原告に校長としての修養を積ませ、かつ、原告の学校経営の能力を研くため、原告を教育センターにおいて長期研修させること、原告の前記不遜な言動に照らし、同人の志望を徴しないままで職務命令としての研修を命ずること、教育センターの受入態勢が整わないことを慮つて学校付校長とすることに決定し、この方針に従い、被告市教育委は、昭和五三年三月一五日、被告県教育委に対し、原告に対する本件転任処分を内申し、同月末頃、原告に対し、長期研修には触れずに、本件転任処分を内示したところ、原告は、教育長小曽我に対し、その趣旨の釈明を求めたので、同人は、これを、校長としての補職を解くことであるから、校長の命じた仕事をするほかは、自由に読書等をしておくようにと説明したが、原告は、納得せず、同所に二時間程座り込んでいた。

(10) しかして、被告県教育委は、昭和五三年四月一日、原告に対し、本件転任処分を発令したが、同時に、安永治誠を中間中校長に任用し、同人をして校長の職務を執らせていたところ、教育センターの都合で、原告の受入態勢が整わなかつたため、原告は、校長室で習字や読書をする日々を送ることとなつた。

(11) 他方、被告市教育委及び同県教育委は、昭和五三年四月七日、中間市役所において、原告に対し、前記投書事件について最終的な事情聴取を実施し、右問題の追求を打ち切つたのであるが、原告は、右処置に対し不満を抱き、昭和五三年八月二九日、裁判所での鑑定経験を有する石田忠之に対し、右投書の筆跡鑑定を依頼した。

(12) その後、中間市における右異常事態が、市民の間で「二人校長」として問題となり、昭和五三年九月一九日、中間市議会において、右問題について質問を受けた教育長小曽我は、早急に正規の形に戻るように努力する旨の答弁をなした。その翌日、被告市教育委は、原告から、右投書の筆跡は原告のそれと相異する旨の、右石田作成の筆跡鑑定書の提出を受けたが、右問題は、既に解決ずみであると考えていたため、これを検討することもなく、右市議会における答弁を実行するべく、当初の予定である原告に対する長期研修を積極的に推進することとした。

(13) そこで、教育長小曽我は、教育センターの受入れを確認のうえ、昭和五三年一〇月二日、学務課長井上孔孝をして、被告県教育委指導第二課との間で、職務命令としての研修命令の発令の手続及び形式を検討させ、翌三日、被告市教育委の委員会において、原告に対する長期研修命令を発することを決定し、翌四日、被告市教育委事務局教育長室において、原告(当時、五四歳)に対し、昭和五三年一〇月五日から翌五四年三月三一日までの間、教育センターにおいて、長期研修を命ずる旨の記載のある研修命令書を机の上に置き、口頭で、右命令書の内容及び研修主題は学校経営である趣旨を告知したところ、原告は、興奮のうえ、前記投書事件の冤罪が晴らされていないことを述べ、前記石田作成の筆跡鑑定書に対する意見を求め、右命令書の受領を拒否し、更に、自分一存では決めかねるので家族とも話し合つて欲しい旨を要望したので、教育長小曽我は、右研修を円満に行わしめるため、直方市内の原告の義兄高島方において、同人及び原告の妻とも話し合い、同月六日、右教育長室において、原告に対し、再度右命令書の受領を促したところ、原告は、これを受領し、背広の内ポケツトに入れて、退席しようとしたので、教育長小曽我は、安心して、原告を呼び止め、激励かたがた雑談をしたところ、原告は、教育長小曽我に対し、再度右冤罪の説明を求め、同人が、これに返答しないのを見るや、右命令書を返して退席した。そこで、教育長小曽我は、翌七日、原告を再々度呼び出し、右命令書の受領を促したが、原告が、これに応じなかつたため、やむなく、同日、右命令書を原告方に郵送したところ、受領拒絶により返送されたので、更に、念を入れて、同月一九日到達の小曽我作成名義の同月一七日付五三中教学第一〇三六号文書をもつて、右研修主題を「学校経営」とする旨を通知し、更に、教育センター所長森英俊を介して、同年一一月四日到達の右森作成名義の同年一〇月三一日付五三教セ第六三四号文書をもつて、右研修の終期を翌五四年三月三一日とする旨を通知した(後二者の文書による通知に関する事実は、当事者間に争いがない。)。

(14) しかるに、原告は、右研修命令に従わず、昭和五三年一二月四日までの間、中間市に出向いていたため、被告県は、右欠勤期間(但し、赴任準備期間である同年一〇月五日から同月九日及び体育の日である同年一〇月一〇日を除く。)を除外して、原告に対する給与計算をなしたうえで、これを支給し、被告市教育委は、昭和五三年一二月六日、被告県教育委に対し、原告の右命令違反について内申し、被告県教育委は、昭和五三年一二月二五日、原告に対し、右研修命令に従わなかつたことが、教育公務員としてふさわしくない行為であるとして、本件懲戒処分をなした。

(15) そこで、原告は、昭和五三年一一月二九日、本件第一次研修命令と本件第一次減額措置の各取消しの訴えを提起し、翌五四年二月二三日、本件懲戒処分の取消しの訴えを提起し、被告らと真つ向から対立することとなつた。

(16) その後、原告は、昭和五三年一二月五日から、教育センターに出勤するようになり、本件第一次研修命令の期間も満了したが、前記経緯により、研修期間が短く、研修実績も十分ではなかつたため、研修修了を認められず、昭和五四年四月一日、本件第二次研修命令の発令を受け、更に、研修を積み、翌五五年三月一日、その研修成果を長期研修員研修報告書として発行し、同年三月二二日、研修修了証書を受領した。

(17) ところが、被告市教育委は、原告の右研修成果では不十分であり、かつ、原告が教育センターにおいて他の研修員に対し、本件訴訟の経過を吹聴する等その勤務態度からして修養に欠けると称して、原告に対し、昭和五五年四月一日、本件第三次研修命令を発令し、翌五六年三月二五日、原告が右研修の修了証書を受領したのにもかかわらず、更に、右同様の理由で、同年四月一日、本件第四次研修命令を発令した。

(三) ところで、教育公務員が、その職責を遂行するために、絶えず研究と修養に努めなければならないことは、教育公務員特例法第一九条第一項の規定を待つまでもなく、自明の理であるというべきであるが、法が不能を強いることを許さないことに照らせば、右研修といえども、当然、当該教育公務員の能力に相応する限度で許容され、しかも、右研修が、教育公務員としての職責遂行上の手段にすぎない以上、研修の目的及びその程度として要求されるものは、完全無欠性ではありえず、当該教育公務員の職務内容等の諸般の事情を斟酌して、相対的に決定されるというべきである。

そこで、これを本件について案ずるに、本件第一次研修命令は、原告が校長職についてから最初の長期研修であつたこと、原告が本件第一次研修命令を受けたのは五四歳当時で、退職勧奨年齢に迫つていたこと、原告は本件第一次研修命令発令以前に五年間の校長職実務経験があること、原告は本件第二次研修命令による研修修了に際し、研究報告を総括発表のうえ、研修修了を認定されていること、原告は、本件第三次研修命令による研修によつて、通算二年半の長期にわたる研修をしていることは、前示のとおりであり、右認定事実によれば、原告は、遅くとも、本件第三次研修命令による研修の修了によつて、原告の能力に相応する程度の研修を達成し、校長現職に復帰しても、十分その職責を遂行することが可能となつたというべきであるから、それにもかかわらず発令された本件第四次研修命令は、原告の能力を越えるか、又は、その職務の遂行上不必要な研修を命ずるものであり、違法の謗りを免がれないというべきである。

なお、原告が、教育センターにおいて、本件訴訟の経過を他の研修員に開示したとしても、冤罪の可能性の高い前記投書事件について、原告が憤慨することは無理からぬところである反面、原告の右言動を修養の名のもとに長期研修命令で封じようとすること自体が、筋違いのそしりを免れず、これが教育公務員としてふさわしくない行為等に該当するのであれば、正面から、分限又は懲戒処分をもつて臨むのが、本筋であるというべきである。

以上の次第であるから、本件第四次研修命令は、本件第一次ないし第三次研修命令と一体となつて不当な目的のもとに発せられたか否かについて判断するまでもなく、違法たるを免れない。

二  本件懲戒処分取消しの訴えについて

1  請求原因7(四)について判断するに、本件第一次研修命令は、昭和五三年一〇月四日原告に告知されたことによつて、その効力が生じたもので、その研修期間は、その命令内容どおり同月五日に開始され、原告が、前記赴任期間等を除き、右同日以降教育センターで学校経営を研修主題として研修すべき職務上の義務を負つたことは、前認定したところによつて明らかであるから、本件第一次研修命令が、同年一一月四日に効力を生じたことを前提とする原告の主張は、採用することができない。

2  請求原因7(五)について判断するに、前記本案前の主張に対する判断二4記載の理由によれば、職務命令に原告主張のとおりの取消事由が存したとしても、その服従義務は発生し、これに違反すれば懲戒事由に該当し、右の理は、後日、右命令が取り消されたとしても何ら径庭はないというべきであるから、その余の点について判断するまでもなく、原告のこの点に関する主張は、失当である。

第三結論

よつて、本件訴えのうち、本件転任処分、本件第一次ないし第三次研修命令及び本件第一次ないし第四次減額措置に関する部分は、いずれも不適法であるから、これらを却下することとし、本件第四次研修命令に関する部分は、理由があるから、これを認容することとし、本件懲戒処分に関する部分は、理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき、行訴法第七条、民事訴訟法第九二条、第八九条を適用して、主文のとおり判決する。

(裁判官 篠原曜彦 吉村俊一 遠藤和正)

目録

1 昭和五三年四月一日付辞令書による「福岡県中間市立中間中学校(以下、中間中という。)付を命ずる。」旨の処分(以下、本件転任処分という。)

2 昭和五三年一二月二五日付辞令書による「地方公務員法(以下、地公法という。)第二九条第一項及び福岡県市町村立学校職員の懲戒に関する手続及び効果に関する条例の規定により、三か月間給料及び教職調整額の月額の一〇分の一に相当する額を減給する。」旨の処分(以下、本件懲戒処分という。)

3 昭和五三年一〇月五日付研修命令書による「昭和五三年一〇月五日から翌五四年三月三一日までの間、福岡県粕屋郡篠栗町高田所在福岡県教育センター(以下、教育センターという。)において、長期研修を命ずる。」旨の処分(以下、本件第一次研修命令という。)

4 昭和五四年四月一日付研修命令書による「昭和五四年四月一日から翌五五年三月三一日までの間、福岡県粕屋郡篠栗町高田所在教育センターにおいて、昭和五四年度長期研修員として学校経営について研修することを命ずる。」旨の処分(以下、本件第二次研修命令という。)

5 昭和五五年四月一日付研修命令書による「昭和五五年四月一日から翌五六年三月三一日までの間、福岡県粕屋郡篠栗町高田所在教育センターにおいて、昭和五五年度長期研修員として学校経営について研修することを命ずる。」旨の処分(以下、本件第三次研修命令という。)

6 昭和五六年四月一日付研修命令書による「昭和五六年四月一日から翌五七年三月三一日までの間、福岡県粕屋郡篠栗町高田所在教育センターにおいて、昭和五六年度長期研修員として学校経営について研修することを命ずる。」旨の処分(以下、本件第四次研修命令という。)

7 昭和五三年一一月二一日付でなされた、同年同月分給与中給料金二一万二五三一円、調整手当金八四九九円の減額処分(以下、本件第一次減額措置という。)

8 昭和五三年一二月五日付でなされた、同年同月分勤勉手当中金五万八〇六三円の減額処分(以下、本件第二次減額措置という。)

9 昭和五三年一二月二一日付でなされた、同年同月分給与中給料金二八万三九二八円、調整手当金一万一三五四円の減額処分(以下、本件第三次減額措置という。)

10 昭和五四年一月二一日付でなされた、同年同月分給与中給料金三万四二八八円、調整手当金一三七二円の減額処分(以下、本件第四次減額措置という。)

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